生成する知と設計する知 ― AIと人間の共創が拓くDesignの未来
(6学会合同特別セッション)
タイムテーブルは プログラムページ(1日目 12/2) もあわせてご覧ください。
AIが文章や画像だけでなく、構造物や概念、設計プロセスそのものをも「生成」する時代になりつつあります。そのとき私たちは、何を「設計」し、どのように「創造」するのかという問いと向き合う必要があります。
生成AIは、これまで専門的な知識や経験が必要とされてきた設計行為・構想行為を拡張し、誰もがアイデアやかたちを生み出せる環境をつくりつつあります。一方で、設計者が積み重ねてきた専門的知や、分野ごとに培われてきた設計の作法・倫理との接続を、改めて問い直す契機にもなっています。
本特別企画では、精密工学・機械・設計工学・デザイン・建築・人工知能の6つの学会から第一線の研究者が集い、「生成する知」と「設計する知」の交差点を探ります。構想・生成・評価をめぐる知のプロセスを共有しながら、人間とAIが共に創造する未来のDesign像について、分野横断的な対話を通じて描き出します。
司会・モデレーター: 清田 陽司(麗澤大学/人工知能学会)
開会挨拶、セッションの位置づけと進行の説明、登壇者紹介を行い、「生成する知」と「設計する知」の関係性を簡潔に提示します。
近年、循環経済(Circular Economy)への移行が求められる中で、製品、ビジネスモデル、データ流通、政策を横断する「循環エコシステムの設計」が重要性を増しています。 本発表では、大規模言語モデル(LLM)を用いた循環エコシステムのシミュレーションや、ベイズ最適実験計画法を用いた循環ビジネス実験計画など、AIを活用した循環エコシステム設計の取り組みを紹介します。
従来の機械設計におけるAI活用の中心は、シミュレーションや最適化など、既存の設計案の評価・改善プロセスにありました。 近年は、設計の初期段階における「コンセプトレベルの生成」への応用が注目されています。 AIが設計者と共に概念を構想し、異なる設計パラダイムを提示することで、創造的な発想を誘発する可能性があります。 本発表では、「AIによる概念生成と設計思考の変容」をテーマに、最新の取り組みや今後の方向性について議論します。
脳の統一理論として知られる自由エネルギー原理やベイズ脳仮説にもとづき、感性の数学的原理モデルを構築し、 設計問題に応用する試みを紹介します。主体感や感情力学、探究サイクルなどの数理モデルを取り上げ、 それらがインタラクション(HCI、HMI)や形状生成といった設計課題にどのように応用できるかを、具体的な研究例を通して示します。
生成AIは、造形やスタイルの模倣を超え、デザインにおける「意味創出(semantics)」の支援者になりつつあります。 本発表では、AIを用いたデザインリサーチや創作実践の事例を通して、 デザイナーがAIとどのように対話し、新しい造形言語やコンセプトを獲得していくのかを検討します。 さらに、デザイン教育や創作現場におけるAI導入の課題と可能性を整理し、「AIが伴走するデザイン的思考法」の未来像を描きます。
「存在論的デザイン」や「自由エネルギー原理」の観点からデザインにおけるAIのあり方を考えたいです。 すると人々がみずからの固有の世界観や価値観を形作っていく学習を、デザインやAIがいかに促すかが問われることになります。 私としては歌うことや踊ることと似た身体的な振る舞いとしてデザインを捉えたいと思っています。
AIが生成する成果物は誰の創作物なのか、という問いは、知的財産権・説明責任・創造の倫理と深く結びついています。 ソフトウェア設計の自動化や創作支援システムの事例を手がかりに、 「AIと人間が共に設計する社会」において、倫理を単なる制約ではなく、 創造の基盤として再構成する視点を提起します。
モデレーター:清田 陽司(麗澤大学)
各学会の登壇者を交えたパネル形式で、以下のような問いを軸に議論します。
聴衆からのコメント・質問も交えながら、生成AIが変えつつある「designの哲学」と、 それぞれの現場実践のあいだを行き来する対話を目指します。
各学会代表から一言ずつコメント(1分×6名)をいただき、本特別企画で浮かび上がった論点を振り返りつつ、 次回以降のDesignシンポジウムや、各学会での継続的な対話への展望を共有します。